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馬場 祐治
Trends in Vacuum Science & Technology, Vol.5, p.45 - 74, 2002/10
100eVから3keVの軟X線を固体に照射したときに表面で起こる化学反応に関し、分解イオンの脱離反応を中心に解説した。主として取り扱った系は、内殻電子励起による吸着系,凝縮系,固体分子からの正イオンの脱離である。内殻軌道から価電子帯の非占有軌道への共鳴励起に対応するエネルギーのX線を照射すると、特定の元素周辺や、特定の化学結合を選択的に切断して特定の分解イオンを表面から脱離させることができる。このような選択性は、第三周期元素の1s軌道から4p軌道への共鳴励起において特に顕著に現れる。共鳴励起後の脱励起は主としてオージェ遷移によって起こることから、内殻イオン化閾値付近のX線エネルギーにおいてオージェ電子スペクトルも測定した。一連の研究で観測された高選択的なイオン脱離反応の機構に関し、電子及び脱離イオン強度のX線エネルギー依存性とオージェ電子スペクトルの結果に基づいて詳細に議論した。
馬場 祐治; 吉井 賢資; 山本 博之; 佐々木 貞吉; W.Wurth*
Material Chemistry 96: Proc. of Int. Symp. on Material Chemistry in Nuclear Environment, 0, p.391 - 399, 1996/00
放射光軟X線を固体表面に吸着した分子の選択的光化学反応に用いる有効性を、筆者らの実験結果に基づき概説した。可視光や紫外線に比べ軟X線を用いる利点は、内殻電子励起の「元素選択性」と「結合サイト選択性」にある。前者はSiCl、PCl、SCl等異なる2種類の元素から成る分子の吸着系からの正イオンの脱離において見出された。後者は、(CHS)分子吸着系のS共鳴励起によるS及びCHイオンの脱離において見出された。オージェ崩壊過程との比較により、これらの選択的光化学反応は、内殻軌道から反結合性軌道へ励起された電子(スペクテータ電子)の効果によるものであると結論した。